馬鹿とGuilty
俺はどうすることもできず
ただ立ちすくんでいた。
周りのざわめきも
聞こえないくらいに
頭が真っ白になっていた。
『…………い!
……おい!曽田!!』
「ん?」
しばらくぼーっとしていた俺の耳に
聞き慣れた声が飛び込んできた。
「榎本!」
「お前なにやってんだよ!
早く行くぞ!!」
「え、でもじーさん…」
「いいから!」
苛立った様子の榎本は
俺の腕を乱暴に掴むと
人だかりから引っ張りだした。
「救急車は呼んである。
あとは周りの人が
なんとかしてくれるだろ。」
「でも俺なんか
疑われたっぽいけど?」
「お前なんもしてねーんだろ?
だったらいいじゃねーか。
後でなんか聞かれたら
素直に答えりゃいいんだよ
何も知りませんって。」
「そりゃそうだけどさ…」
「でもとかだけどとかうっせんだよ
いいっつってんだからいいだろ。」
「お、おう」
この少々強引な友人は
榎本慎也(えのもとしんや)
家は徒歩で5分くらいの
近所にあって
小学生の時からずっとつるんでる。
いわゆる幼なじみってやつだ。
「お前はほんっとに昔から
面倒ごとに巻き込まれるのが
好きだよな」
「別に俺だって好き好んで
巻き込まれてる訳じゃねーし」
「あー、不幸体質ってやつ?」
「……はあ」
そう、榎本のいう通り
俺は昔からなぜかよく
面倒ごとに巻き込まれる。
小5のとき
クラスのとある女子生徒の
靴が隠される事件があったとき
彼女の靴はなぜか俺の靴箱の中にあった。
小6のとき
近所のスーパーで泥棒がでて
店員に追いかけられ
走って逃げてきた犯人から
盗んだ商品を取り返したものの
なぜか俺が犯人扱いをされた。
中学にあがったとき
体育でバスケをやっていて
俺がなげたボールが
コート外にいた女子に直撃した。
中学卒業前
裏庭でねこが死ぬ事件があって
ねこが死ぬところに遭遇し
丁度そこを生徒に見られた。
そして今朝
いつも通り学校に
登校しようとしたところ
目の前で老人が倒れた。
ここまでくると
面倒ごとだけで済むのかも怪しい。
幸い死人はでていないが、
あまりにも俺の周りで事件が起き過ぎだ。
誰かに仕組まれてるんじゃないかと
疑ったことすらある。