【退屈と非日常】(仮)
【第一章】:第一歩を踏み出すなら、勇気を持て。
電話の向こうに聞こえた声は非常に人の良さそうな声だった―なんてことを思って見上げた空はもう直ぐ6月も半ば。
桜も終わって入学式独特の浮かれ気分なんかとうに吹っ飛んでいた。気づけばゴールデンウィークすら終わっていたというこのテイタラク。

―そしてまだ、私はそれを引きずっている。

その病の名は、多分五月病。





本当に入りたかった第一志望の高校に見事に落ちた。
私の努力が足りなかったんだ、しょうがない。

そんなやけっぱち半分の私が新しい生活への幾許かの期待を持って入学したのは、一つランクを落とした滑り止めの女子高―女の子ばっかり1学年あたり17クラスもあるというマンモス校だ。一体どこからこんなに女の子が湧いてくるのかと正直思う。でも実際に生徒がそれだけいるのだから更に驚きだ。

制服であるセーラー服は中学の時に着ていたそれとそんなに変わらない。変わったところと言えば、セーラーカラーのラインが三本から二本になった、それだけだろう。

スカートまで一緒だというから始末に悪い。
お陰様で制服の洗い替えに困ることもなかったのだが。

全く新しい生活への期待も、その新生活の初っ端の一端を握っている制服がほぼ中学と変わらないという絶対的ながっかり感に、期待を全て須らく打ち砕かれたのである。まあ、さほど期待はしてなかったけれど、やはり制服が変わると気分が変わるだろうと予想していただけに大してダメージではないけれど、ダメージを受けたのは確かだった。

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