魔界姫志ーまかいきしー
「…ん、ん…」
小さくか弱い声が聞こえた。
「…目が覚めましたか?」
ルイの言葉に首を傾けると、カメ女がぼんやりと起き上がり俺達を見つめ僅かに頷いた。
「水でもどうぞ」
慣れた手つきで水をコップに注ぎ手渡すルイだったが、その光景をぼんやりと見つめ続けるカメ女に俺は声を掛けた。
「…おい」
「……?」
「何があったか聞かないが何時までも泣いてんな」
側にあったタオルをカメ女の膝へ投げ捨てる。
それを受け取った否や瞳いっぱいに涙を溜めて
ポロポロと泣き出した。
…これだから女は面倒臭い。
泣けば何でも済むと思ってんだろ。
どうせ、この女も…。
「ごめ…ん、なさ…ッッ…
私、のせいで…ロイが…ァ、っ」
苦痛の叫び、とはまさにこの事だろう。
タオルで口元を押さえながら俺達に謝罪の言葉を繰り返すカメ女に何故か俺の胸は痛くなる。
…何だ、この痛みは。
「ロイ、と…約束をした…のに゛…っ
守れながっだ…グスッ…」
「…ロイを守れなかったのはお前のせいだ」
「……!!」
「シキ…今そんな事を言わなくても!!」
「ルイは黙ってろ」
カメ女は目を見開いて、ルイは溜息を吐いて、ユエは下を向いて
俺の言葉の続きを待っていた。