魔界姫志ーまかいきしー
「今から三年も前の話よ。
三年前にこの宮殿に隣町のお姫様が来客として招かれたわ。
そのお姫様を護る女騎士が…ミイを殺したのよ。」
私にはあまりにも衝撃なことだった。
隣町…女騎士…殺す…そんな言葉が私の頭の中で ぐるぐると廻る。
「王様が気に入らなかっただけなんですって、そのお姫様は。
それで王であるレイに女騎士は刃を向けたのよ。
その時は丁度…ほかの騎士は城下町での乱闘に手を焼いていたわ。
その上に、騎士の数すらも圧倒的に少なかったのが原因だった。
王様の側近なんて、ほぼ居なかったに等しいほどにはね」
「それで父親を守ろうとしたルイが彼女に負けてしまった。
彼は防御魔法に優れていたけれど…相手の攻撃の方が遥かに上回っていた。
それでルイが殺されそうになったのを妹のミイが庇ったのよ。
彼女は次期王女になる予定だったわ。
…それに、彼女は魔法なんて使えなかった…ただのか弱い女子だったのよ」
唇を噛み締め、拳を握って手を震わせるオリに私は黙って手を重ねた。
もう、聞いていられない…
もう、ルイの過去も分かった。
どこか冷めたルイは、その出来事で心を閉ざしてしまったんだ。
「嫁を病気で亡くし、娘さえも他国の女騎士に殺され、王様は遂に怒り狂ったのよ。
その時は彼女達は逃亡して残されたのはルイとレイと
話を聞きつけて戻って騎士数人だけだった。
娘を殺したのはお前だと、ルイに言い放ってこの国から追い出したのよ。
追い出したというか、ルイは自分から出ていったわね」
ああ…そうだったんだ。
ルイの過去にもユエの過去にも大切な人が殺されるという、立ち直れないほどの壁があったんだと。