魔界姫志ーまかいきしー


何も知らない私が軽い気持ちで過去を、皆を知りたいと思ってしまったんだ。

…軽い気持ちなんかじゃないけど、きっと皆にはそう思われているに違いない。

私は部外者なんだから。

この国の者でも、何でもない。

「…オリ…話してくれて、ありがとう

やっぱりルイは妹さんを殺してなんかいなかったんだね。

これで、私は王様に勝てる気がする」

「…貴方って無謀ね。
アタシの話を信じるなんて」

「オリは嘘なんか言わないでしょう?
それは何となく分かってるから…私はオリを信じるよ」

「ほんと…馬鹿ね」

そう言って私から顔を背けてしまった。

顔を覗き込もうとしたけど、オリの肩が僅かに震えているのを見て

泣いてるんだ、と思った私は近寄ることも無くその背中を見てから再び月に目を向けた。

私は何も見てないから…泣きたい時は、泣いていいよ、と

聞こえもしない言葉をオリに向けて心の中でつぶやいて。

…ルイ、私は貴方も助けたい。

お父様と仲良くもして欲しいの。

二人はすれ違ってしまっただけなんだよ…ただ、一言ごめんって言えれば何かが変わったかもしれない。

でも一番は…関係の無い人を巻き込んだ隣町の姫様と女騎士が悪いんだ。

その人達が来なければ、ミイさんも死ななかったし三人で上手くやっていけたかもしれないのに。

赤の他人が家族との間に亀裂を作ってしまったんだ。

その亀裂を完璧に修復する事は私には出来ないけど…修復する手伝いなら、私にだって出来るはず。


…ルイに助けてもらってばかりの私が唯一返せる、方法なんだ。

だから私は死ぬわけには行かない。

まだシキのことも…知らないんだから。


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