魔界姫志ーまかいきしー


「やあ、おかえりユイちゃん」

焚き火をしてるのかユエは私を一瞬だけ見て手を振り、直ぐに焚き火へと視線を向けた。

「た、ただいま…」

周りを見てからユエの近くにあった丸太に座ってぼんやりと眺める。

キャンプしてるみたい…小さい頃に一度だけ家族としたことあるけど、あんまり覚えてないなあ。

こんな風に火を焚いて魚を焼いて…

それがまるで大分昔のように思えた。

「…ねえ、皆」

「なんだ」

「どうしました?」

「うん?」

それぞれが首を傾げたりしながら私の言葉の続きを待っている。

「あのね、私のーー…」

私の記憶が戻った。

そう言いかけて口を閉ざす。

もし、記憶が戻ったことをシキ達に言ったら私が彼らと旅をする理由が無くなるんじゃないか、と

元の世界の帰り方なんて探しても見つからないに決まってる。

それじゃあ、彼らに話して私はどうなるの?

もう、ここでお別れ…?

そんなの、嫌だ。
まだ皆と一緒に居たい
一緒に旅をしていたい。

「…何でもない!!お腹空いたね」

そう言って嘘をついた。

その嘘に気付かれる事もなくシキは「食い意地か」と呟いてルイとユエはおかしそうに笑って。

釣られて私も笑うんだ。

これでいい、今はまだ…このままで居たいから…。



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