魔界姫志ーまかいきしー
「……」
ずっと黙ったまま下を向く王様…ううん、この時ばかりは父親の顔をしていた。
父親としてのレイさんだ。
「…お父さん…」
きっと初めて呼んだであろう声。
父上と呼ぶのはルイがお父さんを王様として見てるから。
お父さん、と呼ぶのは唯一 自分がお父さんと血の繋がった家族であることを示すため。
「……ルイよーー」
「レイ様!大変です!
何者かが城内に入り込んできました!」
レイさんが何か言いかけたとき見回りをしていたであろう騎士が顔を青くして私達の間に割り込む。
その声は焦りと驚怖、そして憎悪が含まれていた。
その場にいた皆が何事かと口々に話し出す。
「…静かにせんか。
その者はどこのどいつだ、」
そんな声で周りはいとも簡単に静寂に包まれる。
レイさんの声だけがやけに大きく響いている。
私も、ただ黙って状況を確認するしかない。
「…私達の事を忘れたのか、王様よ」
その言葉と共に宮殿の上部が激しい音を立てて崩れる。
いや、崩れるというよりも上部だけが崩れるような。
「くっ…危ない!」
そんなルイの声で我に帰る。
上部の破片が幾つも落ちてきて私達まで下敷きにされかねない。
上手く交わしながらもルイが防御魔法を張ってくれる。