魔界姫志ーまかいきしー


「聞き分けの悪い奴だ。

……ベルガ、殺れ」

腕を前に出してレイさんを指差す。
その爪は黒く塗られていた。

「…御意」

短くそう呟き立ち上がると左胸へ手を当てて、まるで騎士が忠誠を誓う様なポーズを取る。

このままじゃ、殺られる。
レイさんを助けなきゃ。

そう思うのに怖くて足が動かない。
膝が笑ってるよ、これ…。

情けないなあ、私。
この人達を護るなんて言ってるのに何一つ動けてないじゃん。

目を閉じて思い出す。
私がいつも危ない時に助けてくれたのはお父さんだ。

危険を顧みずに私を助けてくれる。
そんな風にはなれないけど、大切なものを護る勇気が欲しい。

この世界に来た意味が、もしも私にあるのなら

私に、勇気をください。

どんなに小さな勇気でもいい。

今は、それが欲しい。



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