魔界姫志ーまかいきしー
元々、私はここの人間ではないし
ここの人達の事なんて分からない。
そんな私が恋するなんて間違ってるんだと思う。
今までシキに感じてきたモノはすべて、私の淡い恋心だったんだ。
ドキドキの正体も。
今、カナさんに恋をしていると知って私の胸がチクチクと傷んだのも、全部ぜんぶ
私の勝手な片想いのせいだったんだ。
剣を交わらせて何かを話しているシキとベルガ。
その声は私に届くはずもなく、今二人がどんな話をしてるのか。
カナさんの何を話しているのか。
私は分からないままだった。
「…ルイ、皆とカナさんの関係を私にも教えてよ…」
酷く小さな声で呟かれた言葉にルイの肩が小さく震えた。
「…後で、お話しましょう」
そう返してくれたルイの声は震えているようにも聞こえた。
おかしいな…そう思った瞬間に私達を包んでいた防御の壁がなくなった。
「…くっ…」
そんな苦しそうなルイの声。
恐る恐るルイの背中から顔を覗かせれば右手をこちらに向け、口元に笑みを浮かべているカナさんの姿。
ねえ、シキ。
あなたの好きになった人は、こんなに野蛮なことをする人なの…?
あなたの愛してる人は…私達に牙を向け、いとも簡単に人を殺してしまうような人なの…?
「…害虫が、死ねば良い」