魔界姫志ーまかいきしー
カナさんはそう呟いてから何か呪文のような言葉を唱えている。
それは私にもわかる。
この人は今から私達を攻撃しようとしてるんだと。
シキはベルガと戦ってるしここまで来れるはずないしユエは怪我をした騎士たちの治療で手一杯なはず。
残されたのは体力が限界でこれ以上防御を張れないルイと
無能なまま立ち尽くす私だけだ。
「これで終わりにしてくれる」
その言葉を最後に私の頭の中は真っ白になって何がなんだか分からなくなった。
気づいた時にはもう、目の前にルイのお父さんがいて。
何があったの、そう考える前に謎が解けたような気がした。
「っ、…お父さん…!?」
ルイの焦った声で私は我に返る。
私たちの目の前にはルイのお父さんがコチラに背を向けて立っていた。
でも、その背中からは沢山の黒く尖った結晶のようなものが突き刺さっていて。
その箇所から川のように流れる赤い液体。
それは前にも見た光景だった。
あれは、ロイが私を守ろうとした時だ。
あの時も私はロイに助けられてロイが死んでしまった。
じゃあ今は?
今のこの光景は、あの時と同じ。
「ルイ…今まで、…済まなかった…
間違っていたのは、私の方だった…っ
許してくれとは言わない、…だから…」
そこまで呟いてレイさんは1度振り返って優しい顔で微笑んでくれた。
初めて見たレイさんの笑顔。
口の端から零れる一筋の赤。
全てが、何もかもが
スローモーションに見えて
ドサッと音と共にレイさんは動かなくなった。