魔界姫志ーまかいきしー
【シキside】
「己の愛する人が敵とは可哀想な事だな」
鼻で笑いながら俺を見てくるのはベルガという女だ。
三度目の再会だが、この女はただ者じゃない。
その証拠に俺の剣をいとも簡単に交わして俺の攻撃すら、効いていない。
「くっ…」
金属と金属が交わる音の中、俺は圧倒的な力を前に押されていた。
目の前で相手の剣を止めている俺だが
カナの話を出されるとどうも反応するらしい。
好きだったのは間違いねえし否定するつもりは無いが…それを今改めて言われると悔しさでおかしくなりそうだ。
カナはなぜ黒石に入った?
カナはなぜ俺達や民を見捨てた?
カナはなぜユイを狙う?
色んなことが頭を巡ってまともに戦えねえ…。
「お前、ほんとうるせえ…黙って戦えないのかよ」
足や腕に力を入れて相手の剣を弾き飛ばすもベルガは身軽な動きで一回転すれば俺から距離をとって楽しそうに呟いた。
「見てみろ、現実をな」
剣を仕舞って顎でクイッと示すベルガに俺も目を向けた。
「もう、やめてえええええ!!!」
その途端にユイが泣き叫ぶような声を上げているのが聞こえる。
こっちに集中してたせいでルイ達を見失ってたが…なんだ、これは。
そこには倒れてるルイの親父さんと膝をついて俯いてるルイに意を決したようにカナを睨みつけるユイ。
「貴様には救えないだろう」
その言葉の意味が俺には理解出来なかった。