魔界姫志ーまかいきしー

「暗黒の世界から来たりし者、
我に集いし我の命令に答えよ

ダーク アロー」

泣き顔からフッと真剣な顔付きに変わってルイの横を無表情で通り過ぎながら

ユイは聞いたこともない呪文を唱えた。

聞いたことないのは俺がこの世界のことを知らなさすぎるからなのか

それともユイがまた、勝手に作り出したのか分からないけど。

何本もの真っ黒な矢がカナ目掛けて飛んでいく。
それを当然のように交わすカナの口元には不気味な笑みが。

まるで、こうなることが分かってたかのように。

「ユイ!!」

俺がどんなにあいつの名前を叫んでもあいつは一度も振り向かなかった。

いつもはカメ女って呼んでるのに…本人を前にすると呼べないただのヘタレだ。

こんな時にしか呼べねえなんて。


クソッ…!!

俺はどっちを助ければイイんだよ。

カナの事を嫌いだと言えば嘘になる。
でも、今まで俺達が護ってきたのは紛れもない、あいつだ。

そんなあいつを見捨てるって言うのか?


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