魔界姫志ーまかいきしー


「「ルイ…」」

私とシキの声が重なる。

もう駄目だ、きっとルイも…。

そう思われた時、砂埃に立つ2人の姿。

私はシキの手を掴んで走り出す。
ルイはまだ生きてる、ちゃんと生きてる

死んだりなんかしてない。

「全く…危ない所だったわ

ほら ルイくん。さっさと立ちなさい」

砂埃から聞こえる女の人の声。

…えっ…女の人がベルガの あの攻撃を受け止めたってこと…?

「相変わらずですね…オリ」

オリ。

確かにルイはそう言った。

私の中でその名前に当てはまるのは1人しかいない…彼女からルイの事を聞いたのだから。

「…オリ?」

私の唇から小さく紡がれた言葉に女の人の影がピクリと動く。

「…ふふ、ユイ。アタシよ」

砂埃が消えてやっと2人の姿が見える。

「………!!!」

その姿に私は絶句した。

苦笑いを浮かべて瓦礫の塊に背中を預けて辛うじて立っているルイの姿に

ロイぐらいのコンパクトな大きさになって宙に浮いているオリの姿。

それは私が見た人間の時のオリじゃなくて それは丸で妖精のような姿。

金髪の髪は左右高く結えられていて
ワンピースのような黄色い服に背中には羽根が2枚ついて飛んでいる。

…宮殿の地下に眠る妖精。
その話を今思い出すって事はもしかして
もしかしなくても…その妖精は…オリ?

「オリ…貴方まさか」

「ええ、そのまさか、よ
アタシが妖精フレグラント・オリーブ

通称オリ。」

得意気ににっこりと笑う。

フレグラント・オリーブ…金木犀。

そうか、だからオリはルイに…。

昔から知り合いだったのはルイの故郷にオリがたまたま住み着いていたから。

だから時が来るまでオリは待ってたんだよね。

「アタシの力をルイに授けるわ。

アタシはルイに相応しい妖精よ
この力でユイや皆を守ってちょうだい」

そう言ってオリは私より小さな手を前に突き出して暖かい光をルイに向かって撃ち放つ。

ルイの身体はその暖かいオレンジ色の光に包まれて輝き続ける。

ユエの時みたいに風が吹いたりしないんだ…妖精にも色んな力の授け方があるんだね。




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