魔界姫志ーまかいきしー
「シャイニング・ライト」
耳元で静かにそう呟かれた瞬間に森一帯にランプで照らしたような灯りが零れる。
間違いなくユエが唱えた呪文だ。
こんな魔法も使えるんだ…凄い。
「これで少しは戦いやすくなっただろう、二人とも」
「ああ、さんきゅユエ」
「助かります」
三人でちゃんと役割を分担しながら戦っている彼らに勝てる人などきっと居ない。
ヘヴンもミルも確かに強い。
だけど、それよりも彼らの方がもっと強いに決まってる。
「…おっと。
何か勘違いしてるようだがお前達にその姫君は勿体ない。いや それよりも恐らく手に負えないだろう」
シキの攻撃を交わしたヘヴンが大袈裟に退け再び木に足をつけた。
それに釣られるようにミルも空中で一回転すれば、ヘヴンの隣へと並んで私達を見つめる。
「勘違い?それを言うならお前らもだろ
俺らが手に負えないならお前らだって無理だと思うが?
それともなんだ。
自分たちはコイツを救えるとでも?
ただ利用してこの世界を消そうとしてるお前らに、この女を手懐けるなんて それこそ無謀だと俺は思うけどな」
はん、と鼻で笑うようにシキも言い返せばその言葉に眉を顰める二人。
戦う気は既に無いのか剣を仕舞ってただ無言でお互い見据える。
「俺達ですらその姫君に手を出すのは難しいだろうね
だけど、彼女が自ら"ソレ"を望み、選ぶとすればーー?」
ニヤリと口角を上げて逃がさないとでも言うようにシキから私へと視線を向けるヘヴン。
その瞳と視線が絡まった直後に私の胸が大きくざわついた。