魔界姫志ーまかいきしー
けれど、言われた私は皆を振り向いて一度だけ頷いてその異様な空間へと歩みを進めた。
もし仮に戦闘になっても一騎打ちなんだ。
残されたみんなの中でもやっぱりシキとベルガは誰より早く剣を抜いてお互いに距離を取り、見つめあって戦闘の機会を伺っているようだった。
もちろん、ルイとユエも距離を取ってミル、ヘヴンと睨み合う。
「 —— 殺れ。」
私が椅子に座ったと同時にカナさんが口を開けば辺りは一瞬にして戦場となった。
地響きや、埃が舞うのも構わずに机に広げられたカップに視線を落とす。
「 中身は普通の紅茶だ。
毒などは一切盛っていない…そんな事をせずともお前など私の手に掛かれば。」
言いたいことは分かった。
それに彼女はそんな下手な小細工なんて使わないだろうと私自身も思っている。
だから平気でそのカップに口をつけて温かい液体を渇いた喉へと流し込んだ。
「 世間話って、今更なにを話すって言うの。」
先に口を開いたのは紛れもない私。
沈黙に耐えかねないし…何より、みんなのことが気になって仕方がない。
悠長に話してる時間だって本当は惜しいのに。
「 そうさな…あれはまだ私がアイツらのそばに居た頃。
この世界に陽があった頃、夏の暑い日差しの中だった。
初めてアイツらと向日葵畑に出掛けた時に私は思ったのだ。
こんな風に人を笑顔にしたいと。」