魔界姫志ーまかいきしー
「 ユイ!!! 」
遠くてシキの声が聞こえる。
ベルガと戦いながらもちゃんと私を見て、私の名前を呼んでくれている。
壁に埋まる身体を起こして口元を拭う。
相手に羽根が生えている以上、速度では私の勝ち目はほぼ無いだろう。
なら、速度も何も関係ない魔法を使えば…?
「 天から降り注ぐ矢のように、光よ…私に力を!!! 」
呪文なんて知ったことか、私が思い祈ればきっとこの地の生き物達は応えてくれる。
左手を天に掲げてそう呟けば眩しい光の矢が部屋中に降り注ぐ。
それは私とカナさんだけではなく、サイドで戦っている彼らにも被害は被る。
「 ——てめ、カメ女!
ちょっとは仲間の危機も考えろ! 」
「 ご、ごめんなさい…! 」
敵味方に関係なく降り注いだ矢を避けながらシキは眉間にシワを寄せて怒った。
こんな時でも、彼はやっぱりいつも通りで。
ルイとユエとは防御を張っているらしく涼しい顔をして二人の相手を続けている。
が、ユエの治癒だけじゃ間に合わないのかかすり傷程度のものがチラホラと見える。
「 ほう…中々やるな。
だが——お前に足りないものは実践での経験値。
その点では私の方が上だろう。
ああ、それと。
あと一つお前に足りないもの
それは——… 」
背中の羽根がひと回り大きくなったかと思えば勢いよく羽ばたかせて強風を起こす。
思わず目を瞑って腕で顔を隠したのが間違いだった。
また、彼女は私の目前へとやってきてお腹へ手を当てる。
「 それは、その生を背負う覚悟だ 」