魔界姫志ーまかいきしー
ドクン。
心臓が握り潰されたような感覚に私は目を見開いて血濡れの眼を見つめた。
覚悟。
決めていたはずの覚悟は彼女よりも弱いということだろうか。
お腹に当てられた手はそのまま私の臓器を握り潰すようにギリギリと奥へ奥へ侵食してくる
「 あああああああ…っ、!!!! 」
実際、きっとこれは彼女の幻覚で、能力に過ぎない。
その証拠に私の腹部から赤い液体は流れていない。
でも、それでもこの感覚は本物だ。
細いその腕を掴んで涙目になりながら見上げる。
「 ほんと、は…ッ、あなただって…! 」
まだシキの事が好きで好きで愛してたまらないのに。
それは言葉になることなく、かわりに目を見開いたカナさんの表情が伺えて私の腹部にある奥深い“ 何か ”を間探っている。
「 お前の中心部にある黒い感情の核を寄越せ。
さすればお前は元の世界へ戻れるだろう。
そしてその黒い核は私の中に取り込んでこの世界を終わらせるのだ 」
—— 元の世界へ帰りたい。
でも、こんな形で帰りたいわけじゃない。
この世界も、あなたも…みんなも、もっと違う方法で。
「 っクソが、手間かけさせんじゃねえよ。
しっかりしろ!ユイ! 」