魔界姫志ーまかいきしー


遠慮がちに扉の閉まる音が聞こえた途端に、

「あのミルってやつ怪しい」

そう、シキくんが訝しげに呟いたのを私は聞き逃さなかった。

「怪しいって…シキくん…」

「事実だろ。今日会った奴、しかもぶつかっただけで一緒に旅するとか暗黒の森へ行きたいとか、おかしいだろ」

そうかもしれないけど、だけど…。

「私の時だって、会ってすぐだから同じだと思うよ?」

「お前は目的があるだろ。
あいつの目的が何か聞いてねえし」

用心深いのは良い事だと思うけどあんな純粋な女の子を疑うなんて私には無理だよ…。

「まあ、様子見だな」

そう言ってユエさんとルイさんと三人で何かを話し合ってるシキくん。

「…ユイちゃん」

「ロイ…」

私の傍に来て、ちょこんと座るロイの頭に手を置く。

気持ち良さそうに瞳を閉じるロイを見てると私も無意識に微笑んでいた。

「シキは人を信じれないんだよ、そんな気がする」

私の手を掴んで眉を下げながら窓に目をやるロイに私は何も言い返せないでいた。


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