魔界姫志ーまかいきしー


「…いい子だね、ありがとう」

ロイがそんな事を言っているのも知らずに私は逃げた。
怖くて、自分が弱くて逃げ出したんだ。

ロイを置いて逃げ出した私は木の陰に身を潜める。
逃げたけど、ここなら遠目から二人が見える。

機会があれば助けられるかもしれない。
そんな浅はかな願いを込めて。

ロイだけを置き去りにして本当に逃げるなんて私には出来ない。

木陰からこっそり盗み見するように二人の様子を見る。

ミルは自分より大きな獣の手を操りロイはその攻撃を交わすだけ。

戦いに疎く、第三者の私から見ても分かるほどに圧倒的にミルが有利だった。


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