志麻くんのせい。
離してくれない。
そして、空き教室に入ったのかな、たぶん。
「お前過去になんかあったんだろ?楓からきいた」
いつのまに。
ま、楓は言いそう。
でもこの人には関係ない。
「関係あるよ。俺と顔似てるんだろ。それに、俺はお前が好きだし」
理由になんの。
それ。
なんか笑えてきた。
あはは、こいつばかじゃん。
「おい、なに笑ってんだよ」
頭を小突かれる。
「いや、なんか佐倉くんイメージと違うくて…あはは」
久しぶりにこんなに笑ったかも。
佐倉くんも笑って…
怒ってる?
笑ったから?
「ごめん。佐倉くん。笑ったりしてごめんね」
「は、そんなことで怒ってないし」
え、じゃあなに。
好きってこと流したから?
「ごめん、私まだ好きとか考えられなくて」
「それもだけど違う」
うーん。
「じゃあなに?佐倉くん」
「…それ」
え!?
それ?
「俺、名字で呼ばれんの嫌い」
え。
「なんで?」
「…佐倉って女みたいじゃんか」
「だから…なの?」
顔を赤らめながらうなずいてる。
しかもなんか拗ねてて…
かわいい。
じゃなくて、
「じゃあ志麻くん?」
なんか恥ずかしい。
っていうか私志麻くんとだと普通に話せてる。
嬉しいのかな。
「だめ。…名前で呼んで?」
いつものちゃらい感じと違う。
これが素なの?
「志麻……くん」
やばい、自分で言ったけどすごい恥ずかしい。
名前呼ぼうとしただけなのに。
きっと顔も赤い。
志麻くんは?
志麻くんの顔を見る。
あれ、真っ赤。
「…あ、見んじゃねーよ。ていうかもうくんづけでいい」
なんかまた怒っちゃったっぽい。
でも私だけドキドキしてるんじゃないってわかって嬉しい。
おもしろい。
「…またわらってんじゃねぇよ」
「へ」
ードサッ
ちょっと待って。
私
押し倒されてる?
「…な、なんなの」
「…ていうかお前男苦手なんじゃねえの、俺はいいのかよ」
え。
いきなりその話なの?
「なんか、志麻くんはいいみたいです」
「…へぇ」