太陽の家
ニートはガムのナイフをそっと握った。

「…嫌じゃなかった」

「え?」

小さく呟かれて、ガムは聞き返した。

「…直実が俺に執着しだしたとき。めちゃくちゃ困ったけど、正直、少し嫌じゃないって気持ちもあった」


「…あの強気な直実が俺がいないと生きていけないって言ったとき、なんか、直実に勝った気がして……自分の弱い心とか、直実で隠してた」


「……世間からも、直実からも、自分からも、しょうがないだろって思って……逃げてた」

「…………………」

ガムはうつむいた。

「勝手ばっかで、ごめん。でも、俺……キャバが大切なんだ」

「…私、より?」

「俺は、自分に大事な人の順位なんてつけない。つけられない」

「何それ。じゃあ、誰でもいいじゃない。私でも……いいじゃない!!」

よくわからない理屈に、声を張り上げて怒鳴った。

「いや、俺は……キャバがいいんだ」



「キャバじゃなきゃ、ダメなんだ」

「…………!」

ニートからナイフを奪おうとしたガムだが、ニートは刃の部分をつよく握って阻止した。


「くっ……」

ニートの手から血が流れ、それを見たガムが少しひるんだすきに、ニートがナイフをうばいとった。

「いて……」

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