太陽の家
ニートが玄関を出ると、ちょうどバイト帰りのキャバとはち合った。

ニートとキャバと言えば……

「あ、キャバお帰りっ」

「…………ただいまっ」

キャバはぼそっと言うと、うつむいてすたすた行ってしまった。

心なしか、顔が赤い気がする。

1ヶ月前に告白してから、キャバはずっとこんな調子だった。

ニートが話しかけても無視はしないが、ぼそっと返事をして、そのまま逃げるように去っていく。

しかし、イモ子や他の住人には普通にしゃべるようになった。

「…俺、今日から働くから」

ニートはめげずにキャバの後姿に声をかけた。

「そう……」

「うん…じゃあね」

いつもと変わらぬ態度にニートは少しため息ついて、行こうとしたが…。

「仕事って………現場だっけ?」

「………う、うん。交通整備」

決してこっちは向かないが、キャバから話題を降ってきた。

「て、手は、大丈夫、なの?」

「ああ…手?大丈夫」

どうやらキャバは、ニートの両手の傷を心配しているらしかった。

「き、気をつけて………」

そう言ってキャバはニートの方を向き、ぎこちなくだが、笑顔を見せてくれた。

「う、うん」


< 108 / 176 >

この作品をシェア

pagetop