太陽の家
「おい」

「あ、はい」

「タイヨウ、いま寝たばっかだから……ちょっと、時間いいか?」

クモは親指で待合室を差した。

「?……はい」

待合室には、何人かの患者さんやお見舞いの人たちが座っていて、少しざわめいていた。

天井にかかっているテレビには、よくわからない時代劇が流れている。

「……屋上行くか」

「……はい」

ここだと落ち着いて話せない、と判断したのだろう。

イモ子も同感だった。

屋上にあるベンチに腰かけて、クモはタバコに火をつけた。

「……準備は?」

「あ……同じグループの子が、みんな用事できちゃって……今日は中止にしよっかって」

「そう……」

「はい」

(クモと二人で話すなんて……あの時以来かも)

クモはイモ子をチラッと見た。

「……ゆう」

「え?」

「じゃなくて、ユキと、気まずいか?」

思わず本名で言いそうになって、クモはすぐに訂正した。

「はい……」

(何でこんな事聞いてくるんだろ…?)

「私、何か気に障ることしたんですかね?」

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