太陽の家
「…いや、あんたは何もしてない。あの日…あんたが病院に向かったあと、タイヨウとユキが口論になって」

「え?」

確かにユキがタイヨウを植木で殴りつけた記憶はあるが、その後揉めあいになったのは、初耳だ。

「それで、タイヨウが……イモ子はユキのことが好きだって……」

「タイヨウが?」

(何てこと言うの、あの人は……)

クモは近くの灰皿にタバコを押し付けた。

「あいつさ、鈍いから……あんたは、ずっとタイヨウが好きだと勘違いしてたみたいで……」

「えっ?!」

「なのに自分のことが好きだって知って……多分、どうしていいかわかんねーだけだと思う。あんたの気持ちに気づいてやれなかった自分に腹が立ってるみたいで」

「そんな、ユキは悪くない!」

思わず声を張り上げたイモ子に、クモは少し目を見開いた。

「あ……すいません」

(……私が勝手に好きになっただけなのに)

「……告白、しないのか?」

「え!そんな………滅相もない」

「別に、俺は気にしないし」

クモは平然としているが、イモ子の不安は消えなかった。

「い……いや~」

(そ……そんなこと言われても……)

< 145 / 176 >

この作品をシェア

pagetop