太陽の家
「今更、伝えたところで……ユキはクモのことが……」

言わなくても、フラれてるようなものだ。

「俺がこんな事勧めるのもヘンな話だし、嫌味にとられるかもしれないけど……昔、自分の気持ち伝えないであきらめて……後悔したことがあったから」

「……好きな人に?」

「……本当に好きだったけど、何も言えなかった」

「ユキ……じゃなくて?」

クモは黙ってうなづいた。

(ユキの前にクモが好きだった人か……)

「決めるのはあんただから……そろそろ行くか」

「はい」

先に歩くクモの背中をぼうっと見つめた。

(過去って、聞いてみないとわからないもんだな………)

当たり前のことだが、改めて思った。

クモは一生ユキしか見てない様な感じだったのに、その前に好きな人がいた……。

あと、一つ疑問がある。

(その、好きな人は……女なのか、それとも)

さすがにそんな不躾なことは聞けない。

しかし、何となく、イモ子の勘で、相手は女の人の様な気がした。


病室に戻っても、タイヨウは寝たままで、何も話さなかった。

イモ子の想定した気まずいパターンだったが、意外にそうでもなかった。

多分、その前にクモと話したからだと思った。

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