太陽の家
「身の程知らずだと思います。身内の宮子さんが言っても聞かないくらいだから……でも、このままタイヨウが弱っていくのをただ見ているのが、辛いんです」


『………………』

「…お願い、します」

『……住所しか、知らないけど』


次の日。

宮子が教えてくれた住所のメモを握りしめ…新幹線に乗り込むイモ子の姿があった。

この事は、まだ誰にも話していない。

「……怒られるかな」

『次は、山口に止まります』

目的地に着いて、新幹線から降りた。

電車で1時間半、駅から歩いて30分ほど経って、そのアパートは見えてきた。

「201だから…2階だよね」

一人呟きながら、古びた階段をカンカンと音を立て、登った。

「……ここ、だよね」

表札はないけれど、イモ子は確信してチャイムを押した。


…………………。


返事は、ない。


「………………」

もう2、3回押した。

………………。

やはり、誰も出ない。

「働いてるって聞いたし……まだ仕事中かな」

よく考えてみれば、今の時刻は昼の12時半。

大抵の人は、働きに出ている時間帯だ。

「……その辺で、時間……潰そう」

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