太陽の家
「……倒れて……それまでは、何も知らなかったけど、持病があったみたいで…治すのが難しい病気にかかって…目が、見えなくなるって」

「………………」

二人は俯いていたが、イモ子は続けた。

「妹さんが、いるって聞いて…宮子さんから、住所聞いたんです。勝手なことをして、ごめんなさい。でも……」

「………………」

「…過去の事も、聞きました。ただ、一度……夏生さんに会ってほしくて」

イモ子は深く頭を下げた。

「…………………」

二人は、何も言わない。

「お願い、します」

「……山瀬は、何か言ってました?」

聞いてきたのは、雨だった。

「………過去の話はしたけど、それ以外は…何も」

そうだ。

別にタイヨウは妹に会いたいだなんて言っていない。

しかし。

「…何も言ってませんでしたが、夏生さん……タイヨウってゆうんです」

「タイヨウ?」

自分の中ではしっくりくるあだ名も、何も知らない二人には、意味不明だ。

「……私たちのアパート限定のあだ名みたいなのですけど。多分、明るくて太陽みたいだから……」

「…私が、昔言ったんです」

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