太陽の家
「冬美さんは、何のお仕事を?」

「お弁当工場です」

「へぇ……大変そうですね」

「そこじゃないと、養えなくて」

ドアの中から叩く音が聞こえた。

「えっ…?」

冬美がドアを開けると2、3歳の男の子が顔をのぞかせた。

「空」

そら、と呼ばれた子はとてとて歩いて雨の足にしがみついた。

「空、パパ電話中だから」

冬美は空を抱き上げた。

「子供……いるんですか?」

想定外の存在の登場に、イモ子は目を丸くすることしかできなかった。

「はい、結婚して………2年くらいして生まれたんです」

「宮子さんは……知ってるんですか?」

「………話して、ないです。引っ越してからはほとんど連絡もとってないので……。住所くらいしか知らないし」

(……て事は、タイヨウも知らないよな)

しかも、小さい子供がいるとなると……会いに行くのは困難だろう。

「……わかりました」

雨はケータイをパチンと閉じた。

「電話終わった?」

「おう」

空は、冬美の肩から雨を覗いた。

「ぱぱ………」

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