太陽の家
しかし、いまの心境とは裏腹に、大きな不安がイモ子の心を曇らせた。

冬美を失ったいま、タイヨウの生きがいはいわば太陽の家と冬美の残してくれた植木だけだった。

それすらもなくなった。


もしかしたら、もう、タイヨウは……この世界には……


「………っ」

イモ子は体が震えだした。

(どうしよう……心配かけたくないのに……涙が)

皆、口には決して出さないけど、似たような心境だと思った。

「イモ子……」

「泣いとけ、イモ子」

「え?」

隣のキャバの言葉をさえぎって、助手席のユキがイモ子に声をかけた。

「あいつは生きてる。そんで、ほんと死んだかと思ってた~イモ子なんか、泣いてたし……なんて言うから」

「ユキ………」

「言うから。俺、絶対言うから。だから、今のうちに泣いといていい」

「ユキ………」



太陽の家の前に車を止めて、4人はあらためて、家がなくなったという現実を見た。


建物はある程度形は残っていたが、花壇の花は全焼していた。

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