太陽の家
「刺して、あそこの路地裏に捨てておけば、簡単には見つからないしさ」

何故か目の前に、自分が雨を捨てた路地裏があった。

「………いや」

(……すぐ、見つかったよ)

「どうしたの?手伝うよ」

「おい、冬美!!お前…好きなんだろ?和久!!」

包丁をふり下ろそうとした冬美の肩をつかんだ。

「……………?」

「い、いいのか?」

「好きだけど……お兄ちゃんはそれが面白くないんでしょ?だったら、従う。お兄ちゃんの方が、大事だもん」

「……………」

夏生は、絶句した。

俺は、本当にこんな事言って欲しかったのか?

冬美は、好きだけど……。

和久は………。

自分でも、訳がわからない。

「どうしたの?お兄ちゃん…」

「いや…………」

何だよ、俺…。

和久を刺したのは、俺なのに。

死ねばいいとおもった。

本気で。

『雨って名前、変わってんね』

『…言われる』

これは、同じクラスになったばかりの時の二人だ。

『やっぱり~?お前の親、いいセンスしてんね。兄弟は?』

『……いない』

雨は面倒くさそうに答えながら、サッカーマガジンを開いた。

< 167 / 176 >

この作品をシェア

pagetop