太陽の家
「……………?」

タイヨウは、首を傾げた。

「ごめん、タイヨウ。私……昨日、冬美さんに会いにいったの」

「!!」

この事は、宮子しか知らない。

他のみんなの視線が痛かった。

「……出来ればタイヨウに会ってほしかったけど、無理だって言われた」

「………………」

(……そりゃそうでしょ……)

心の中で自虐的に呟いた。

「でも、せめて手紙だけでもって伝えたら…ポストにこの植木が入ってた」

植木には、何の花かはわからないが、芽が出ていた。

「手紙も……植えられてた」

植木から掘り起こした土まみれのメモをさしだした。

「……目が、かすんで…よく見えない。読んでくれる?」

「…………うん」

震える手で、メモを開いた。

「山瀬夏生様」

「………………」

「…あの日の事は、未だに、悪い夢だったらいいのに…と思います。でも…雨のお腹の傷や、少し足を引きずって歩く姿を見る度、現実だと思い知らされます」

大雨のなか、倒れた雨にすがる冬美の姿を思い出した。

自分は、それを物陰で見ているだけだった。

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