太陽の家
「私も、美紀みたいなコは苦手だけど、美紀のことは嫌いじゃないよ」

「ふっ。じゃあ、私、行くね」

「うん。行ってらっしゃい」


美紀の姿が見えなくなった頃、後ろから物音がした。

「あ、ユキ」

「おっす。今日は、ほんとお疲れな」

「んーん。ユキこそ、疲れてるでしょ」

「ん、大丈夫。夜更かしは、慣れっこだし」

ユキは親指を立てて見せた。

「はは……ユキは、これからどうするの?」

「俺は……新しいアパート見つけるまで、しばらくはアイツとホテル暮らし」

「……………………そっか」

"アイツ"が誰を指しているのかわかり、イモ子は少し暗くなった。

「…どした?」

「何か、ユキとこんな会話するの、久しぶりだなって」

「…………イモ子、俺………ごめん」

「謝らないで」

ユキの"ごめん"が何を表しているかも、わかった。

「ユキに謝られたら……私、困っちゃうよ」

「………………」

「…謝ったら、だめだよ」

「そうやな……ごめんじゃなくて、"ありがと"」

ユキは笑った。

「うん。ユキといて、楽しかった」

「うん……俺も。じゃ、行くな」


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