太陽の家
しかし、目の前の男は背もあまり高くなく、ツリ目の童顔で高校生でも十分通るだろう。

耳にかかったでかいリング型のピアスと、八重歯が特徴的だ。

「やめとく?」

男は不安そうにうつむく少女の顔を下からのぞきこんだ。

「…いえ、入ります。なんか……楽しそうだし」

男の顔が、ぱっと明るくなった。

「ほんとう?やった★今日はパーティするね、イモ子!」

「………イモ子?」

「うん、イモ子。最初に言ったでしょ?あだ名で呼び合うって。君、なんかイモいし」


(イモいって…)

少女は田舎から夢を追って上京してきた美大生だ。

顔はまあまあなのだが、身なりは確かに………イモかった。

「……一応、本名は上原由希ってゆうんですけど……」

「本名はここでは忘れていいよ」

「いや、でも書類とか」

一緒に暮らすのなら、契約書が必要なはずだ。

「ああ、そーゆーのはこっちでテキトーにやっとくよ。あと、郵便の宛名とかは…住所と、太陽の家で届くから」

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