太陽の家
「ああ、トモコ………悪いけど、今日は会えない……」


「…いや、予定とか約束はないけど、俺の今一番大事な奴が、ちょっとめんどくさいことになって……」

「向こうは何も言ってこないけど、きっと俺を待ってんだ。俺にもあいつが必要だから、迎えに行ってあげないといかないから………」


「…ごめんな」


『………そっか。寂しいけど、ちょっと安心した』

「安心?」

『ユキってさ、優しいし人あたりはすごくいいのに、何か、どこか冷めてるってゆうか……誰かのために熱くなったりするの、バカらしいみたいに思ってる感じしたから』

「ああ…そうかも」

『だから、寂しいけど、ちょっと嬉しいかも』

「うん……本当にごめん」

『じゃね』

静かに、通話は切れた。

「タイヨウ」

「ほい」

「悪いけど車、出してくれる?」

三人を乗せた車が走り出した。

「ユキ」

「ん?」

「クモは…ユキの仕事に、反対しないの?」

あの嫉妬深いクモが、ユキと異性が二人きりで話す事を許せるとは思えなかった。

「…クモは、知らない」

「え?」

タイヨウの家から車で2時間ほどかかる海岸に、一人の男の姿があった。

男は海岸に腰かけて、静かに波を見つめていた。

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