太陽の家
普通、深夜に引っ越しの営業なんてするはずがないのだが…"少し訳ありな家専門"と言っていた。

「本当は、頼まれた人たちの家に…話聞きにいって、お金もらってるだけだった」

「…………………」

「俺なんかより、お前の方が全然素直なんだよな」

「…俺が海好きで、昔よくここ連れきてくれてたから、ここかと思ってきたら、本当にいたし」

ユキはクモを見つめた。

「……………」


「かえるか」

そう言って、クモに手を差し出した。

「嫌」

クモは子供がするようにプイと顔を背けて丸まった。

「ガキじゃないんだから!」

「…ガキだよ!」

呆れたように言われ、少しムキになって返した。

「お前といるときの俺は、ガキだ」


「………ガキのままで、いたいんだよ……」


「……鈴帆が死んだ時のまま?」

鈴帆とは、クモの死んだ妹のことだ。

「………………ああ。結局、俺はあの頃から変わってない。変われない……」

「俺、玲司のそうゆうとこ、嫌いなんだけど」

「…………!」

クモは顔を上げた。

「そうやって自分の短所を自分で上げて、開き直れば許されるとか思ってるとことか。今回だって、イモ子やタイヨウに迷惑かけてんのに、全然反省してないし」

「……悪いとは、思ってる……けど」

「じゃあ、直せオラ」

ユキはクモの背中を蹴り上げた。

「イッ…」

いきなり背中の痛いところを蹴られ、突然の痛みに顔を歪めた。

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