太陽の家
「俺は、いつまでも"俺"のままじゃいられないし」

クモをちらっと見て、大きく息を吸い込んだ。

「……変わるから。悪いけど」

「……………」

「だから、一生ここにいるか、俺と変わってくか、選べ」

「…………………」

二人の間に、潮を含んだ風が吹いた。

「……………わかった」

「クモ…」

「…変わる」

「うん。タイヨウとイモ子には先帰ってもらったから、アシないんだ。もう寒いし」

ユキは結局、クモが変わる決心をしてくれると信じていた。

「………帰るか。お前の、のせろ」

二人はクモの車に乗り、海岸を走った。

「帰ったら、ちゃんとイモ子に謝れよ。タイヨウにも」

「祐一」

「なに」

「……俺、イモ子のこと、嫌いなわけじゃないからな」

ユキの事で、イモ子には冷たくあたったが…イモ子の人柄をクモは決して嫌いではなかった。

「……うん」

ユキもそれはわかっていた。

「…お前が自分から誰かに歩み寄るの、初めて見て、あせったってか」

「イモ子は、俺の初恋の人に似てんだ」

「え?」

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