太陽の家
「向こうは遊びだったのかもしれないけど、私は、タクヤくんなりに真剣に悩んだのかなって。一度本気で好きになった相手のことは信じてあげたいなって。フラれたけど、タクヤくんと付き合ってるときは、本気で幸せだったし」

残りの酎ハイをグビグビ飲んで、一息ついた。

「…バカなんだな、あたしは」

「…本気で惚れちゃったら、みんな、おかしくなるでしょ、バカみたいにさ」

イモ子はタイヨウの横顔を見つめた。

「…タイヨウも、バカみたいにになったこと、あるの?」

「…あるよ。今でも」


「バカだから」

(タイヨウも…………恋してるんだ)


「俺も、イモ子も、ユキも、クモも、みんなバカなんだって」

「ふふ……」

二人は、日が昇るまで飲み明かした。

午前7時。

タイヨウの家の前に、一台のタクシーが止まった。

助手席から、一人の女性が降りてきた。

キャバだ。

スウェット姿のキャバは、いつもの濃い化粧もしていない。

太陽の家に戻ると、まず風呂に入り、ミネラルウォーターを飲んでから寝るのがキャバの日課だ。

しかし、今日はミネラルウォーターが先に飲みたくなり、リビングへ向かった。

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