太陽の家
けれど、クモはあえてそれを口にはしなかった。

ユキばかり見ているクモは、イモ子の気持ちも、いち早く察知していた。

………多分、イモ子よりも早く。

ユキは、人なつっこい割りに、恋愛感情にはにぶかった。

今もイモ子の気持ちには気づいていないだろう。

きっと、イモ子もユキのそんなところに惹かれたのだろう。

ユキがイモ子に自分から近づいたのも、下心は全くなく、ただ純粋にイモ子に興味があったから。

タイヨウがイモ子に想いを寄せているであろう事をユキに話したら、同時にイモ子に好きな人がいる事が知られてしまう。

そこまで言ったら………イモ子がユキのこと好きだとわかってしまうかもしれない。

(……面倒なことは御免だ)

とりあえず、クモは自分とユキがよければ、後のことは何かもう、どうでもよかった。



タイヨウが家に戻ると、玄関前でイモ子が座っていた。

「イモ子……」

「タイヨウ」

タイヨウはイモ子に駆け寄り、イモ子の前にしゃがみこんだ。

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