太陽の家
「……じゃあ、私は、普通じゃないんだね」

イモ子はにこっと笑った。

「……私が今、大好きな人も、別に私のことなんとも思ってないよ」

「……………何で?」

「恋人いるから」

「…………………」

イモ子の笑顔は、どこか悲しそうだった。

「その人の恋人がケンカして失踪して、その人の前では、心配してみせたけど……心のどっかでさ……ひょっとしたらこれはチャンスかも、なんて……考えたけど」



「全然だった」



「……クモの中にユキしかいないように、ユキの中にもクモしかいなかった」

結局は、二人の絆の強さを思い知っただけだった。

「ユキ……クモ……て」

「その時、気づいたんだ。私の中で、大好きな人が苦しい時に側にいれないより、側にいても何もできないほうが辛いんだなって」


「ユキの事は、今でも好き……うん、大好き。あきらめてないとかじゃなくて、ユキのこと、まだまだ知りたいと思うし、私のことも知ってもらいたい。笑顔だってもっとたくさん見たい」

「…………………」

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