太陽の家
「…入ってこないで」

「話したいんだ、開けて」

「嫌よ」

「直実!」

今まで気をつけてはいたが、勢いでつい本名を言ってしまった。

「ごめん……」


「……今、着替えてるから」

「…わかった。待ってる」

しばらく待つと、整った格好をしたガムが出てきた。

手には、大きな旅行カバンがある。

「直実……?」

「ここ、出るわよ。次の部屋はもう探しておいたから」

「え……?そんな」

「私、今日は彼氏の家に泊まるから。明日までに荷造りしといて」

ガムはニートに目もくれず、階段を降りていった。

「ちょっと、そんないきなり言われても……」

「私、明日仕事あるから…明日の夜9時に北原駅前で待ってる」

ニートはガムの肩を掴んで、強引に振り向かせた。

「直実!俺、いま、好きな人が……」

「秀也」



「裏切ったら、死ぬから」



「本気で」

ガムはそのまま階段を降りていき、ニートはその場に立ち尽くした。


自分も本名を言われたことで、ガムがどれだけ本気なのがわかった気がした。

< 89 / 176 >

この作品をシェア

pagetop