私が愛したのは最低な人間でした
「え、え…と…」
戸惑う私に伊波はニコッとする。
「前は俺のこと、琉希くんって呼んでくれてたんだよ?」
そ、そうなの…?
どうしよ……。
全然覚えてない。
でも、過去の私がそう呼んでいたのなら、今の私もそう呼ぼう。
『琉希くん…』
は、恥ずかしい……。
男の子を下の名前で呼ぶこと事態、そんなにない。
ましてや、過去に会ったことがあるとは言われても、それが記憶にない私からしてみれば、彼とは初対面なわけで。
“琉希”と名を口にするだけでも、私にとっては物凄く勇気のいることだった。
顔が熱くなっているのを感じつつ、琉希くんを見上げると
「ヘヘッ…」
照れつつも、どこか楽しそうに笑っていた。