私が愛したのは最低な人間でした
そして、俺がこの場所に残りたいと言い張って、母と父と俺とで真剣に時間をかけて話し合った結果。
父親が単身赴任で出向くことで決まった。
多分、俺が最後まで抵抗していたから、いろいろと気を使ってくれたんだと思う。
ありがたいことに、二人とも俺の意見を尊重してくれたんだ。
父親には寂しい思いをさせることになるけど、その話に異論はなかった。
でも、ある日の夕食時。
俺の意見はその僅かな時間で、真逆の方へと傾くこととなった。
三人で母親の作った料理を囲んで、団欒していた時のこと。
もう、父親とこうして一緒に食べる機会も減るんだなって、そう考えながら和やかな会話を楽しんでいた。
だけど、ふと父親に転勤先を聞いていなかったことに気が付いた。
両親からは今の高校が通えなくなる距離とだけ言われていたから、この時の俺は何気ない気持ちで聞いたんだ。
返ってきた返事を聞いて、飛び上がったのを覚えてる。
父親の口から出てきたのは、“東京”の文字。