私が愛したのは最低な人間でした
『とう…きょう…っ!?』
嘘…だろ……!?
アイツが…。
アイツがいるかもしれない…っ!!
小学六年生に上がってすぐ、引っ越してしまったあの人。
確か、当時の担任教師が東京に行ったと言っていた。
俺にとって、どうしようもなく好きな人。
そして……。
ひどく傷つけてしまった人でもある。
会いたい……。
もう一度、もう一度だけ会うことが許されるのなら。
会って、抱き締めて、“ごめんね”って謝って。
“好きだよ”って、そう言いたい。
だから……。
『父さんっ!!俺、やっぱりついてく!!東京に行くよ……っ!!』
俺の心を動かしたのは、大好きな人が東京にいるかもしれないという、たったそれだけのことだった。
両親は俺の急な態度の変わりように驚いていたけど、それでも最終的には理由も聞かないままに了承してくれた。
俺達はその日、家族三人で東京に行く決意を固めた。
彼女がどこにいるかもわからないのに。
そもそも東京にいるとは限らないのに。
東京にいたとしても、どこに住んでいるのか知らないし、探しようがないのに。
高校を、友達を、そしてずっと住み続けた地元を捨てて、都会に行くっていう決心が揺らぐことはなかった。
どうしても、どうしても会いたかったから。