私が愛したのは最低な人間でした

俺のことを覚えてないってことは、俺との間に亀裂が入ってしまったことも、記憶から消えてるってことになる。





それなら…。





またやり直せるのかもしれない。



嫌われなくて済むのかもしれない。



もう…あんな苦しい思いをしなくていいのかもしれない。





また一から関係を作っていく。



その方が、気持ちを伝える近道になるのは確実。





昔は仲がよかったけど、あることをきっかけに、彼女は俺を避けて嫌い始めた。



必死に話しかけても無視されて。



謝ろうとしても距離を置かれて。



凜の家に行っても出て来てくれなくて…。





俺の人生の中で一番辛くてしんどかった時期。



さらに、そんな俺に追い打ちをかけるように、いつの間にか凜は引っ越してしまっていた。



また会うことがあったとしても、避けられるんじゃないかっていう不安は大きくて。



誤解を解こうと必死に説明しても、聞き入れてもらえる保証はない。





だったら、いっそのこと……。



忘れられたままでいいんじゃないかな?





今までの思い出と引き替えに、凜の心を掴むことができるのなら…。





俺は迷わずそれを望む。


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