私が愛したのは最低な人間でした
「凜っ!今のどういうことよ!?」
『な、何が…っ?ていうか…い、痛い…!』
琉希くんが私から離れると、それを見計らっていたかのように仁香が迫って来た。
強い力で肩を揺さぶられて、その痛みで私は声を上げる。
「あぁ、ごめんごめん。いや、だからね?伊波とは知り合いだったのって話」
私から離れて仁香が聞いてくる。
その横には神崎もいた。
『え、わかんないよ。そんなの覚えてないもん』
むしろ、戸惑ってるのは私の方。
いきなり抱き付かれて、知らない人に久しぶりとか言われて、何とも思わないわけがない。
「覚えてないって…まじで?あんなイケメン、男の俺でも一回見たら忘れないと思うけど」
神崎は顎に手を添える。
『うーん…。私もそんなに忘れっぽい方じゃないと思うんだけどなぁ』
思い出せないのが不思議で仕方ない。
「そういえばさ、藍澤。伊波のこと、どっかで見たことあるような…とか言ってたよな?教室にアイツが入ってきた時」
『えっ?あ、うん。何となくそう思っただけだけど』
直感っていうか、琉希くん見た瞬間によくわからないけど、そう思ったんだよね。
あっ、どっかで見たことあるって。
その“どっか”がよくわからないんだけど…。
会ったって、きっぱりと言い切れる自信もないし…。
あーあ。
私も衰えてるなぁ。
何で覚えてないんだろ。
高二でボケるのは、さすがに早いって。