私が愛したのは最低な人間でした

「ほんとに会ってたりするんじゃないの?電車とかコンビニとか近所とかで」





仁香は琉希くんの方を見ながら言う。





『そういうのは無かったような…』





うーん…。


ほんと、どこで会ったんだろ。





考えれば考えるほど、余計気になってくる。





それに……。





【前の俺のことは…忘れてくれていい…】



【思い出されるのは、正直ちょっと…怖いんだ】





琉希くんの言葉。





あれはどういう意味なんだろ。





切なげな表情で言った琉希くんの顔が浮かぶ。





あー駄目だっ!


考えても全然わかんない。





「中学の時の友達とかはないの?」





仁香は腕を組みながら首を傾げる。





『あ、それはないかな。三クラスしかなかったから、同じ学年の人の顔と名前は覚えてたし』





ていうか、中学の時点で東京に引っ越してたから、その時期に琉希くんと会ってはいないはず。





もしら琉希くんと会う機会があったとするならば──。





「中学の頃くらいは覚えてるだろ。やっぱり、小学じゃね?俺も記憶が曖昧なとことかあるし」





小学生……。


でも、あの時期に私と親しかった人なんて…。





「神崎!それ禁句っ!凜に小学生の時のこと聞いちゃ駄目!!」





バシッ!





乾いた音が耳に飛んでくる。


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