私が愛したのは最低な人間でした
『いじめられてただけだよ』
仁香が言わない代わりに、自分の口から告げる。
すると、神崎も仁香も驚いたように大きく目を見開いた。
「り、凜…!ちょっと……!」
『もう…。仁香もそんなに敏感になんなくても大丈夫だよ。埼玉の子達だよ?会うこともそう無いって』
私は笑って、不安げな表情をしている二人に言って聞かせた。
……本当は、今でも引きずってる部分はある。
いじめを受けていたという事実は、目を逸らしても付いて来る。
精神を傷つけられた私の傷は、正直完全には癒えていない。
だけど、関係のない神崎にまで、要らぬ同情を買いたくなかった。
「いじめ……?」
神崎の唇が震えた。
「藍澤…おまえ、いじめられてたのか?」
『うん。見えないでしょ?』
私はにっこりと微笑む。
今はいじめられるどころか、たくさんの友達ができて、毎日それなりに楽しい学校生活を送れている。
「そ、そっか…。何かごめん……」
バツの悪そうな表情をして、神崎が謝ってくる。
『いじめられてたって言っても、埼玉に住んでた時だけだし。東京に来てからは何もないんだから、そんな顔しなくていいの!』
もう平気だから。
私をいじめていた人達は、この学校にはいないから。
神崎に言いながら、自分自身にも言い聞かせる。