私が愛したのは最低な人間でした
四時間目の授業が終わって昼休みになると、私は琉希くんを連れて、食堂に向かう生徒達の後を追うようにして教室を出た。
『速水くんは二年D組なの。あっ、フルネームで速水咲哉(ハヤミ サクヤ)くんね』
「へぇー。D組なんだ。教室いるかな?」
『どうだろー』
こうして話している間も、琉希くんには多くの生徒達の視線が注がれていて、学園の王子と呼ぶに相応しい扱いをされていた。
でも、琉希くんは相変わらず素知らぬ顔。
D組の前に着いて、速水くんがいるかどうか確かめようとした時。
同じタイミングで、綺麗な顔立ちをした男子生徒がその教室から出てきた。
琉希くんよりも長身で平均よりも少し白い肌。
黒髪にちょっと冷めた目つき。
『速水くん!』
「……?」
その人物は、紛れもなく去年同じクラスだった速水咲哉くんだった。
速水くんは怪訝な表情で名前を呼んだ私を見下ろす。
「あっ…」
私の顔を見ると、速水くんは短く声を上げた。
「藍澤…?」
『久しぶり』
私はニコッと笑いかける。
「久しぶり…」
そう言った速水くんの視線が琉希くんの方へと移る。
「あっ。俺、伊波琉希。えっと…速水、だよな?」
「そう…だけど?」