私が愛したのは最低な人間でした
去年まではいたみたいなんだけど、その生徒は当時三年生で、卒業してしまったらしい。
それからはマネージャー志望の子もいなくて、部員達で手分けして練習とマネージャーの仕事を両立していたみたい。
そして、その話を部員から聞いた琉希くんは、部活に所属していない私をマネージャーへと推薦して、断り続けていた私が折れるほどしつこく頼んできたんだ。
バスケのルールなんてわからない素人なのに、部長やコーチを始め、部員達は大歓迎で迎えてくれて。
その結果、私は部員達のサポートをしつつ、彼らの練習風景を眺めながらバスケのルールを必死に勉強することとなったのだ。
「まぁ、まだ入部して三日だもんね。焦らずゆっくり覚えていけばいいよ」
優しくて頼りがいのある部長は、私にそう言って微笑みかけると練習へと戻っていった。
広い体育館に響くボールの弾む音と、キュッキュッと靴底が擦れる音。
部活着に着替えた一同は、汗を滴らせながら練習に励んでいる。
三年生は皆、体格が大きくて、しなやかな筋肉も付いている。
それでいて、素早くて。
私には到底真似できない活発な動きを見せていた。
そんな先輩達に上手く食いついているのは
、二年の琉希くんと速水くんだ。
二人とも長身を生かして、ゴールを狙ったり、ブロックしたり、キビキビとした動きで相手を翻弄している。
凄いな……。
その姿に自然と目が奪われて、素直に歓喜に浸っていた。
うちの学校は運動部に力を入れてることで定評だけど、そう言われるほどの熱気を毎度のことのように練習を見て感じさせられる。
あっ、ルール覚えなきゃ。
先輩から貰ったルールやコートの名称が書かれた資料に目を通し、ブツブツと呪文を唱えるように呟きながら、バスケの知識を頭に叩き込んだ。