GOING UNDER(ゴーイングアンダー)
夢みたいな話だけど、具体的にはどんなにして個人で病院を開設するのか美奈子にも見当もつかなかったけど、琴子には逃げ道が要る。パパの病院が琴子の第一志望コースなら、滑り止めといった感じで。
「そうしたらパパが考えていることに関係なく、琴の頑張り次第で、ママに認めてもらうこともできるよ、きっと」
勢いで言ってしまった美奈子の言葉を聞きとがめて、琴子は問い返す。
「けど、美奈は? 美奈は別に個人病院の経営なんて考えてなかったんでしょ?」
「私の動機はさっきあいつが言った、琴のパパの言葉。女に病院の経営は無理だなんて決めつけられるとなんかこう、むらむらと闘志が湧いてきたりして」
言われて琴子はちょっと困ったように笑う。
「けど美奈、医者になったらアメリカに留学してNASAに行くとか言ってなかった?」
「えー、それこそ全く適当に言ってただけだもの」
苦笑して美奈子は否定する。
「パパがノリノリでさ。女医になるんだったら、向井千秋さんみたいに宇宙飛行士を目指せ、なんてけしかけてくるものだから……」
それこそ全く夢みたいな話だ。独立して個人病院を経営するよりももっと実現の可能性は薄い。
「パパの子供の頃からの夢だったんだっていうのよ。アストロノウツになって、火星に行くのが」
パパに代わって夢を叶えてくれよ。冗談めかしたそのセリフの中にたとえ幾ばくかの本気が混じっていたとしても、その言葉が美奈子にとってプレッシャーになることは決してない。
美奈子の父親は、子供が目指す進路に対して、こういった道もあるよという1つの可能性を指し示しているにすぎないからだ。美奈子が臨床医になろうが学者になろうが企業の研究員になろうが、パパは手放しで喜んでくれるだろう。
「……ママ、それでもいいって言ってくれるかな。パパの病院継ぐのでなくても」
こころもとない顔で小さくつぶやいた琴子に、美奈子は言った。
「
そうなったら勢いで、いいって言わせるの」
琴子がママの言う通りにしなくても、世界が終わるわけではない。琴子にそのことがうまく伝えられたらいいのに。もどかしい思いを胸に、美奈子は琴子の手をきゅっと握って歩きつづけた。
「そうしたらパパが考えていることに関係なく、琴の頑張り次第で、ママに認めてもらうこともできるよ、きっと」
勢いで言ってしまった美奈子の言葉を聞きとがめて、琴子は問い返す。
「けど、美奈は? 美奈は別に個人病院の経営なんて考えてなかったんでしょ?」
「私の動機はさっきあいつが言った、琴のパパの言葉。女に病院の経営は無理だなんて決めつけられるとなんかこう、むらむらと闘志が湧いてきたりして」
言われて琴子はちょっと困ったように笑う。
「けど美奈、医者になったらアメリカに留学してNASAに行くとか言ってなかった?」
「えー、それこそ全く適当に言ってただけだもの」
苦笑して美奈子は否定する。
「パパがノリノリでさ。女医になるんだったら、向井千秋さんみたいに宇宙飛行士を目指せ、なんてけしかけてくるものだから……」
それこそ全く夢みたいな話だ。独立して個人病院を経営するよりももっと実現の可能性は薄い。
「パパの子供の頃からの夢だったんだっていうのよ。アストロノウツになって、火星に行くのが」
パパに代わって夢を叶えてくれよ。冗談めかしたそのセリフの中にたとえ幾ばくかの本気が混じっていたとしても、その言葉が美奈子にとってプレッシャーになることは決してない。
美奈子の父親は、子供が目指す進路に対して、こういった道もあるよという1つの可能性を指し示しているにすぎないからだ。美奈子が臨床医になろうが学者になろうが企業の研究員になろうが、パパは手放しで喜んでくれるだろう。
「……ママ、それでもいいって言ってくれるかな。パパの病院継ぐのでなくても」
こころもとない顔で小さくつぶやいた琴子に、美奈子は言った。
「
そうなったら勢いで、いいって言わせるの」
琴子がママの言う通りにしなくても、世界が終わるわけではない。琴子にそのことがうまく伝えられたらいいのに。もどかしい思いを胸に、美奈子は琴子の手をきゅっと握って歩きつづけた。